サントリー美術館で開催されている「若冲と蕪村」を観に行きました。今年は二人の生誕300年に当たるということで、「同い年の天才絵師」というキャッチフレーズで話題になっています。ポスターには有名な象と鯨の絵。広告は完璧です。
若冲は、明治以降忘れられた存在だったのを、アメリカ人収集家ジョー・プライスのコレクションによって再評価されたのだといいます。確かに、一番有名な象と鯨の絵は素晴らしかった。小さな四角をベースに描く「桝目描き」という技法は、ポップで斬新でそれは素敵です。鳥は、鶏も小鳥も描きなれている感じで表現が豊かです。
しかし、墨絵は酷い。特に植物は苦手のようです。私たちは墨絵を描きますので、墨色や筆遣いについては見ればわかります。墨色は単調、筆の使い方もなってない。良い絵が全然ないのです。展覧会では墨絵の方が日本画より多かったように思いますが、ここに紹介するためにインターネットで墨絵の作品を検索しましたが、「若冲」で検索しても出て来るのは殆どが日本画で、私たちが展覧会で見たような墨絵は出てきません。敢えて載せる程のものがないからだと思います。
展覧会では、四双の屏風なのに明らかにヤル気がなくて描いたようなものもありました。でも、それを大勢の人が感心して見ています。有名だから、評価が高い絵師の作品だからという理由で良いものとして見ているようですが、多分若冲本人がこの展覧会を見たら恥ずかしくて隠したくなる作品はたくさんあったはずです。
人の評価というのはいい加減なものだと、友人と話しました。審美眼のある人は少ない。若冲は日本画の絵師としては素晴らしいかもしれませんが、だからといってすべての作品が素晴らしいわけではないのです。そういうわけで、この展覧会は全体として良いものではない、というのが私たちの感想でした。